ある晴れた日。
それはきっと誰もが眠くなるような午後で。
授業がつまらないのも理由のひとつだが。
春の暖かい風がこの三年F組の教室に入ってきているのが、一番だ。
「雪村、佐伯。起きろ。」
先生が、静かに二人を注意する。
二人は動く素振りも見せずに、机に突っ伏している。
先生は、彼女、雪村蒼(ユキムラアオ)と、彼、佐伯龍也(サエキリュウヤ)の頭にトンと教科書をのっける。
席が前後同士の二人は、先生が丁度、手を広げると届く範囲だ。
龍也は顔を上げた。
「せんせー、春は熊や蛙が冬眠から目を覚ます時期なんですよー。」
「なら、お前も目を覚ませ。」
「まだ寝ぼけてても良いって事でーす。」
龍也の屁理屈にクラスメートが笑う。
「減らず口だな。おい、雪村。前に出て問題を解いてみろ。」
蒼はまだ眠そうな不機嫌な顔を笑顔に戻した。
「あと五秒で授業終わりますよ、先生。」
4…
3…
2…
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