ちなみにBHのライセンスを取得(しゅとく)すると、『国際ナンバープレート』を発行(はっこう)してもらえる。これをつけておけば、車だろうがバイクだろうが世界中どこでも合法的(ごうほうてき)に走ることができる。もちろんうちのバイク達にも付いている。
ヨーロッパの都市(とし)は古い建物(たてもの)が多い。それも中世(ちゅうせい)の頃から変わらず建っているものもザラだ。アメリカや日本じゃちょっと見られない光景(こうけい)だ。
サグラダ・ファミリアが見えてきた。何百年も作り続けてて、いまだに完成してない。ずいぶんと気の長い話だ。飽きっぽい俺には絶対無理だな。
しかも、実は市の建築許可(けんちくきょか)を取っていなかったらしい。そりゃ作り始めた頃はそんなもんなかったんだろうが、今となっては巨大な違法建築物(いほうけんちくぶつ)だ。ま、だからと言って解体(かいたい)するようなことも無いとは思うが。
それはそれとして、今回は観光(かんこう)で来たわけじゃない。商売だ。観光地(めぐ)りはまたの機会(きかい)にとっておこう。
(ほど)なくして、目的のホテルが見えてきた。中堅(ちゅうけん)クラスのホテルだ。普通、身を(かく)したいやつってのは目立たない安宿に現金で泊まるもんだが、マルケスはこんな大都市のホテルにカードで泊まりやがった。どんだけ間抜(まぬ)けなんだ。
バイクを止めて中に入る。中の(つく)りもヨーロッパの一般的(いっぱんてき)なホテルの感じだ。オーソドックスと言うか、悪く言えばこれといった特徴(とくちょう)もない。
「いらっしゃいませ」
声をかけてきたホテルのフロント係に、マルケスの写真を見せる。すぐに俺達の生業(なりわい)(さっ)したらしく、あまり良い顔をしない。
BHには(あら)っぽいやつらが多いので、一般人から見ればBHも賞金首も大差(たいさ)ないように映るのだろう。ジャパニーズ・ハシリヤがボーソーゾクとごっちゃにされる構図(こうず)に似ている。その辺は仕方ないとは思っているが。
深く関わりたくないのだろう。フロント係はあまり話そうとしない。仕方ないのでチップを(わた)す。するとようやくいくらか情報をもらえた。
マルケスは一週間ほど宿泊(しゅくはく)していたようだが、今朝(けさ)になって突然(とつぜん)チェックアウトしたらしい。特に(あわ)てた様子(ようす)はなかったそうだ。