「えーっと……」
口どもるボスに、俺とあかりの二人がにじり()る。
「あ、あの……お、おいくらでしたっけ……?」
『二人で国家予算2年分になりまーす』
声をハモらせ言ってやる。
「えっと……もうちょっと安く……」
『てか無理』
忠吉の柄尻(つかじり)とP226のストックが(あご)にヒットし、ボスはその場にひっくり返った。
「終わったな」
言いながら、ディルクは屋上から降りてきた。
「ああ。これで後はマルケスをサツに……って。あれ? マルケスは?」
辺りを見渡(みわた)すが、マルケスの姿はどこにもない。
「まさか……」
「逃げたようだな」
「マジー?!」
あの野郎、どさくさに(まぎ)れて逃げやがったのだ。
「どぉすんのさー! せっかくここまで来たのにー! 捕まえなきゃお金もらえないぢゃん! もぉトッピングなしのピザとかあたし的に無理ー! マジちょー使えないあんた(たち)!」
「うるせー!!」
例によってぎゃーぎゃーわめくガキを一喝(いっかつ)したその時、
「タクシー!」
遠くで誰かが、タクシーを止める声が聞こえた。
『ん?』
3人同時(どうじ)に顔を見合わせる。どこかで聞いたような声。声のした先に目をやると――
今まさに、マルケスがタクシーに乗り込み走り去るところだった。
『あー!』
またも3人同時に声をあげる。
「てか逃がさない!! あたしの食費(しょくひ)!!」
スケボーに飛び乗り、あかりはタクシーを追いかける。
あかりのスケボーは、超ハイトルクモーター内蔵(ないぞう)特別製(とくべつせい)だ。スマホで操作(そうさ)し、時速(じそく)35マイルは出る。ただし、(あつか)うにはかなりの反射神経(はんしゃしんけい)必要(ひつよう)だが。
「俺達も行くぞ!」
無論(むろん)だ」
俺とディルクもバイクにまたがり、タクシーを追いかけた。