『どけー!!』
「きゃっ!」
ずっとスケボーの下敷(したじ)きにされてたその他大勢(おおぜい)の部下たちが、一斉に立ち上がる。おかげであかりは集団(しゅうだん)の中にすっ(ころ)んだ。
「いったー……。てかマジサイアクー! 今のでスカート(やぶ)れたんですけどー!」
見れば確かに、スカートのフリルの一部が若干(じゃっかん)破れたようにも見える。
いや、しかしそれより……
「おい、あかり!」
あかりは周囲(しゅうい)をすっかり、10人の男たちに取り(かこ)まれてしまっていた。
「あれ?」
「『あれ?』じゃないわ! 突然(とつぜん)出てきて、いきなり人のファッションにダメ出ししおって!
お前ら、さっさと取り押さえろ!」
気にしてたのそこかよボス!
10人の男が一斉にあかりに(おそ)いかかる。
「ちょっ! 触んないでよ! 鬼キモい! マジ金取るよ?!」
「ほう金か。いくら欲しい?」
「ガチで国家予算的な?」
「消せ」
いや、それもう良いから!
助けに入ろうとしたその瞬間(しゅんかん)
 
ずばんっ!
 
大気(たいき)(はじ)けるような音がして、男たち数人が()()ばされた。
「この(とし)で消されるとか、マジありえんてぃーだから」
忠吉(ただよし)()いて、(かま)えている。抜刀(ばっとう)した瞬間が見えなかった。
今、(てき)を吹っ飛ばしたのは『剣圧(けんあつ)』とかいうやつだ。よくわからんが、きっとジェダイのフォース的な何かだ。東洋の神秘(しんぴ)。オーマイゴッシュ。
ボスも一瞬(いっしゅん)あっけに取られていたが、
「な、何をしてる! さっさとやっちまえ!」
(おせ)え!!」
俺だってただ(だま)って見てたわけじゃない。この間に間合いをつめて、近くの敵から(かた)づけていく。
P226のストックで、()りで、(ひじ)で。両手に銃を持ったままの体術(たいじゅつ)。俺オリジナルの、名づけて『銃術(じゅうじゅつ)』だ。
次々のされていく部下を見て、
「くっ……調子に乗るなよ! こっちにはスナイパーが――」
 
ターン!
 
ボスが言い終わる前に一発の銃声(じゅうせい)一拍間(いっぱくま)をおいて、向かいのビルから人影(ひとかげ)が下のゴミ箱の中に落ちていった。ディルクがスナイパーを仕留(しと)めたのだろう。
“ホーク・アイ”の二つ名は伊達(だて)じゃない。向こうのスナイパーとはレベルが違う。
それを見ていたボスは、完全に固まっている。
その頃には部下は全員、あかりと二人で片づけていた。