「そんなわけで戻るぜ、ディルク」
言って()(かえ)ると、相棒は(なな)め向かいのビルの屋上辺(おくじょうあた)りに(するど)視線(しせん)を向けていた。
「どうした?」
「さっきあの辺りから、視線を感じた気がした」
「視線……?」
なるべく見上げないように、横目(よこめ)でビルを確認(かくにん)する。俺も(かん)(はたら)く方だが、今は特に何も感じなかった。
(ねら)われていたのかもしれんな」
「って、狙撃(そげき)ってことか?」
「ああ」
同じスナイパーの勘だろうか? 同業者(どうぎょうしゃ)にしかわからない何かがあるのかもしれない。確かにあのビルなら、狙撃するのに絶好(ぜっこう)の場所だ。
「念のため二手に(わか)れて戻ろう。なるべく止まらずに、ルートをランダムに変えながら。
あかりはカフェにいるんだろ? 船には戻らず、カフェで落ち合おう」
「わかった。気をつけろよ」
「お互いにな」
言って俺達は別れ、別々にカフェへと向かった。