ホスト 神

爺の何時になく真剣な眼差しに気圧され、両手に目をやると、手首から先には力なく只ぶら下がっているだけの手が見えた。



「手の甲が砕けとる。今は部分麻酔で痛みは無いが…もう無理じゃ。知り合いの病院から紹介状を貰っておいたから大学病院に行け…なんとかしてくれるじゃろぉ……だから儂はあれほど言っとったじゃろうが!ウチに来るような用事を作るなと!」



爺はその細い腕で、力一杯診察台を叩いた。鏡月の瓶が一瞬宙に浮いた気がして、爺の目には悔しそうな涙が溢れていた。



「おぅ爺、神の奴目ぇ覚ましたか?」



ジュンの暢気な声が[谷口医院]のドアから、待合室を通して聞こえてきた。



「お、起きたなコノヤロー。勝手に突っ走るからこんな事になるんだよ。プレジとして少し反省しろ。」



「…陽子は?」



「あの後家まで送ってったんだけどよ…陽子ちゃんの親ブチギレてて、俺と信太郎に説教始まったから、信太郎だけ置いて帰ってきちまったよ。爺、今回の神の診察料は?九十万?相変わらずタケーっての。」



爺はプルプルと震える両手で、パーの状態から左手の親指だけを手の中に納めた。



「嫌なら、ウチに来るような用事を作らなきゃいいじゃろう。」