ホスト 神

俺が佐和ママに提示した金額は一千万。



特に一千万という金額に深い意味があった訳では無い。



佐和ママに電話をしている時、たまたま大田原辰雄との会話を思い出して試してみただけ。



もちろん俺の体に一千万の価値があるなんて思って無いし、そこまで傲慢でもない。



軽く拒否されると思っていたが、佐和ママの答えはあっさりとイエスだった。



ジュンと軽い冗談を言いながらトイレを出ると、フロアの照明が落とされ薄暗くなっている。



『なんとぉ〜!当店ナンバー1の神さんにぃ〜佐和ママから当店初リシャールのタワーとロマネ三本頂きましたぁ〜!ありがとうございます!』



『ありがとうございます!』



厨房の奥から、ワインクーラーに入れられたロマネ三本をハルさんが運んでくる。



その後ろでは、およそ百数十個のバカラグラスが積み上げられ、その周りに重厚な木箱に入れられた、クネクネと曲がりくねったリシャールが並んでいる。



キャッシャーの脇に立っている影人の顔色が次第に青ざめていき、慌てて携帯を取りだして何処か電話をかけている。



…何度も携帯を落としそうになりながらも、おそらく辰樹に電話をかけているのだろう。