ホスト 神

そう考え出すと絶望感で一杯になり、耐えきれず涙が零れてきた。



スティードの黒いガソリンタンクの上に、一つ、また一つと涙の雫が零れ落ち、跳ね返すように弾けては下へ流れていく…。



俺は思い付いたように携帯を取り出し、[鈴蘭]に電話をかけた。



当然営業はもう終わっている。それでも誰か店に残っていれば由美の様子を聞ける。



コールが鳴っている間、俺は涙を拭い平静を装う準備をした。



「もしもし。鈴蘭ですが。」



良かった。千登勢ママが残っていた…。



俺は千登勢ママが話している途中に割って入り、由美の事を聞いた。



「あら♪神くん!お久しぶりだこと♪え?由美ちゃん?今日いきなり休ませてくれって電話があったわ。あの子にしては珍しいから休ませたけど…どうかしたの?」



俺はママになんでもないと告げ、携帯を静かにポケットに戻した。



…確かに珍しい…。



俺の顔を潰さないように、[鈴蘭]では休んだ事は無かった筈。



仕方なくバイクの行き先を[fly]に向け、不規則に訪れる胃液の逆流を堪えながらバイクを走らせた。