持ち家も、職も、家族も失ってはや三ヶ月。

大恩ある職場を、後ろ足で砂をひっかけるようにして飛び出た俺には、もはや身を寄せる場所なんてなかった。

故郷へは戻れない。
進んでいた縁談をぶち壊して、今の女房と駆け落ちしたからだ。

いや、今はもう女房じゃなかったな。

田舎から出てきた俺は、行く先々で人間関係をこじらせ、いつも輪から抜けるような生き方をしてきた。

それほど身勝手なつもりもなかったが、今こうして頼る友人の一人もないことから察するに、俺は疎まれていたんだろう。

唯一の友人だと思っていた男に裏切られて、俺はこの通り浮浪者になっちまった。
なけなしの二千円で、この三ヶ月を乗り切ってきたが、いよいよ文無しだ。

本格的なホームレス暮らしをするのも忍びない。

俺は彼らと違って、まだまだあっちの世界に未練があるんだ。

よしんばこのまま浮浪者になるにしても、あの男にだけは一矢報いてやらないと気がすまない。