蕾が欲しいのは…


そこで 言葉を切って


繋いだぼくの手を


唇を噛みしめて

蕾は じっと にらんだ



「蕾?」



蕾はうつむいて ゆっくり首を横に振った


そして



「ダメだよ、お兄ちゃんには わからないよ」



全て 諦めたような顔して
蕾は 笑った



ぼくは もどかしい気持ちで いっぱいに なる



どうして?蕾



ぼくは いつも いつだって



蕾を見て来たのに



「蕾が欲しいのは、なに?」



精一杯、平常心を保って言った声は


とても低く、暗闇に響いた



ふっ…と蕾は真顔になって



「一緒に生きる人ではなく

もっと、深いところまで
一緒に堕ちてくれる人」




―――――――ゾクッ


蕾の言葉に


全身


電気が走った


目の前に広がる


夜の闇が


一層、深くなった気がした




「お兄ちゃんには、わからない」



独り言のように呟き


ぼくの手を振りほどいて


蕾は 来た道を 戻って行った