ぼくは ずっと 求めてた
蕾が 隣で 笑ってくれたら
ぼくは許される
全て許される
「お兄ちゃん、蕾ね、ずっと ここにいる気がする」
口元は微笑んでいるのに
伏せた目は泣いてるように見えた
「家は もう ないのに
お父さんもお母さんも いないのに
蕾ね
ずっとここにいる気がするよ
ずっと、ずっと、ずっと
何度、あがいたとしても
抜け出せない罠みたいに
蕾は、ずっと、ここにいる気がする」
そう言って ぼくを見上げた
蕾の目は
迷子のようだった
抜け出せない罠
それは
消えない傷痕
蕾の心に深く刻みこまれた
哀しみ、苦しみ
無条件で得る物を
蕾は得られなかった
心の穴
「ぼくが いるよ、蕾
独りぼっちじゃない。ぼくが…………」
蕾は ぼくの言葉を遮り
「一緒になんて生きたくない」
吐いて捨てるような口調だった
「生きたくない………
そうじゃない
お兄ちゃん、蕾は そんな事を考えられない
蕾が欲しいのは………」



