ぼくの 妹 姫




「ここに 家があったなんて
嘘みたいだね、お兄ちゃん」



ぼくは うなずいて
車の停まってる
アスファルトの駐車場を見た




ここは 8年前



両親とぼくと蕾4人で暮らした家が あった場所





「不謹慎だけど」と蕾は言ってから



「あの時の紅い炎と黒い煙は綺麗だった」



そうか


あの時 蕾は綺麗だと感じたのか



自分の家が


まだ両親が中にいる家が


炎に包まれていくのを見て





「なぜ、ここに?」


そう蕾に訊くと



初めて 蕾はぼくの顔を見て



「お兄ちゃん

どうして、あの時、お父さんやお母さんではなく

私を助けたの?」




ガラス玉みたいに綺麗な蕾の目を見て



両親の寝室に


火を放ったのは ぼくだから


蕾を守りたくて


二人で逃げ出したくて





「とっさの事で わからないよ

たまたま、その日 一緒に寝てた蕾を

1番に助けるのは

当たり前だろう?」