バスに乗って
市内の中心にあるデパートに来た
エスカレーターに乗り
「何を買うの?」って宙に訊いたら
宙は耳まで真っ赤になって
「母さんのプレゼント」
蚊の鳴くような声で言った
3階の 婦人服売り場に
宙は 降りたけど
「もうすぐ母の日だし
でもオレよくわかんないし
蕾、選ぶの手伝ってよ」
まだ赤い宙の横顔を見つめて
私も よく わかんないよ 宙
母の日なんて
縁がない
「す、スカートとか喜ぶかな?」
婦人服の合間をぬって歩く宙に
「宙さぁ、サイズ知ってる?」
「………………」
宙は ピタリと動きをとめ
「………知らない」
「はぁ~~~~~~~」
私は大きなため息をついて
「だったら服は買えないよ」
そう言った私を
宙は 困った顔して見た
「無難に花とかは?」
カーネーションが定番じゃん?
だけど
「花なら枯れるし
あげるなら、ずっと残る物がよくねぇ?」
意外とセコい男だな 宙は