ぼくの 妹 姫




きょとんとした お兄ちゃんが



優しく笑い



私の頭に ふわっと手を置いた



温かい お兄ちゃんの手のひら



「大丈夫、大丈夫

蕾は女子生徒を守ったから

何も問題はないんだよ」



「………本当に?」


「うん。大丈夫だよ、蕾」




そっか 良かった…………



ホッとすると



お兄ちゃんは また椅子に座って



私の手を両手できつく握りしめた



……お兄ちゃん?



「蕾は大丈夫か?」



ためらいながら
お兄ちゃんは口にした



「何が?」と訊くと


お兄ちゃんは眉をしかめ
苦い表情をした



わかってる


【あの事件】を思い出したのではと心配なんでしょ?



視線を逸らし、白いカーテンが かかる衝立(ツイタテ)を見つめて


「お兄ちゃん
蕾ね、あの事は本当に記憶にないよ

だから、思い出す事もない」




【あの事】


その言葉を聞いた お兄ちゃんは


今にも 泣き出しそうな顔をした