ぼくの 妹 姫





夢を見てた



私は 6歳だった



日が沈みかけた薄暗い
夕方の公園で


虫の声が響き渡ってた



そうだ


あの事件の日




木の枝を持って

しゃがみ

地面に絵を書いた

王子様とお姫様の絵



後ろから



「蕾ちゃん」



振り返ると
中学生くらいのお兄ちゃん


あ、この お兄ちゃん

前に チョコレートくれた
優しい お兄ちゃん………



「蕾ちゃん。何してるの」


「絵、描いてるの」


「今日は神社でお祭りあるよ?
行かないの?」



無言で 答えない私に


「お兄ちゃん、連れて行ってあげようか?」



「いや」



「わたあめも、リンゴ飴も好きなもの買ってあげるよ」


「いや」


「どうして?」


「お兄ちゃんと行きたいの」


不思議そうな顔した優しいお兄ちゃん


「え?蕾ちゃん。だからお兄ちゃんが連れて………」


「違う。蕾の本当のお兄ちゃんと行きたいの

お兄ちゃんとは行きたくない」



私が指を差し 言うと


優しいお兄ちゃんの目は



深い哀しみに満ちて