「愛されてるのよ
お兄ちゃんは美紗さんに」
暗闇の中
蕾の優しい声が響いた
「………違うよ………
美紗は伯父さんの反対を
押しきって
家出同然で
ぼくのところに来たんだ」
近親相姦をした男の元に
娘をくれてやる父親はいない
蕾が消えて
喪失感に苦しむぼくの元へ
美紗は家出してきたのだ
怒り狂った伯父さんが
美紗を迎えに来て
もちろん、ぼくは
美紗なんてどうでもよく
伯父さんに差し出し
嫌がりながら美紗は帰る
連れ戻された美紗は
懲りずにぼくの元に
また来て
また伯父さんが連れ帰る
それを何度も繰り返し
とうとう伯父さんが
美紗を見放し
ぼくと結婚したのだ
「愛情なんて……もうないよ
ぼくは最低の夫だからね
美紗は実家に帰れないから
仕方なく……………」
今ごろ離婚準備のために
仕事を探したり
金でも貯めてるんじゃないか?



