ぼくの 妹 姫






「ぼくには蕾しかいないっ!」



胸に溢れる苦しみを
全て吐き出すように
叫んでた




「昔から
ぼくには蕾しかいない


苦しいんだよ…………
どこにも居場所がないんだ
どこにいても
責められてる気がする……」



良き妻であり母である美紗


優しい母に守られ
順調に育つ大樹


非の打ち所のない
普通の家庭


それが どうしようもなく
ぼくを窒息させようとする
ぼくを弾こうとする



「家庭なんて………
ぼくには無理なんだ
何もかも捨てて
蕾と一緒にいたいんだ

いや、違う
ぼくには何もない
もともと何もない
蕾だけだ
ぼくには蕾だけ………」



苦しみを吐き出したいのに
何を叫んでも
のどに つっかえて
逆に苦しい




「……助けてよ………
蕾っ……助けてよ……
もうイヤなんだ………」



泣き叫ぶと
優しく髪を撫でられた



「………蕾……」



蕾は微笑み
腕を伸ばして
ぼくの頭を抱えるように
抱きしめた




顔を埋めた
蕾の胸は柔らかく
ぼくの のどにつっかえた
苦しみを溶かしていく