ぼくの 妹 姫





「――――――…………っ
………どうして?
どうしてだよ?蕾」



蕾は ふふって
力なく笑いながら



「どうしてだよって……
イヤだな、お兄ちゃん
酔ってる…………?」



ぼくの頬を撫でてた
指先を下ろし
蕾は起き上がろうとした




ぼくは蕾の手首を掴み
ベッドに押し戻した



「酔ってなんか………
酔ってなんかないよ」



蕾は首を横に振り



「酔ってるんだよ……

お兄ちゃんには家庭がある

美紗さんや大樹くんのいる家に
私を連れて帰るの?

私だって東京で
仕事があるのよ?

もう子供じゃない

お兄ちゃんはもう
蕾の面倒を見なくて
いいんだよ」



冷静な口調で返す蕾に
違和感ともどかしさを感じた



わかってるはずだ



蕾はわかってるはずだ



ぼくの言ってる意味も
ぼくの気持ちも




「蕾、ぼくは」
「お兄ちゃんは幸せでしょう?」



蕾はぼくに その一言を
言わせようとしなかった




「お兄ちゃん、どいて
私、もう自分のホテルに帰る」




………こんなのってない



やっと会えたのに
ずっと想ってたのに


これで、また
蕾と別れるのか?



こんなのってない………