ぼくの 妹 姫





蕾の頬を撫で続け
10年間を思った



ぼくの10年間
蕾の10年間



もちろん
離れていた空白の時



さっき話した短い会話で
蕾の10年間全ては
計り知れない




だけど




  1人だったから




蕾は ぼくと引き離され
ずっと1人だったのだ




もちろん、その間
何人かの男を
知ったかも知れない



それでも
蕾は1人だったのだ




ギュウッと切なさが
ぼくの心をひねり上げた




「………蕾…………」



蕾は真っ直ぐ
ぼくを見つめる




「………蕾、
ずっと一緒にいよう」



「お兄ちゃん………?」



「このまま二人で
ずっと一緒にいよう」



ぼくの心は もう決まってた




10年前に決まってた



蕾と ずっと一緒にいたい



誰にも邪魔されず
ただ穏やかに
兄妹で暮らしたい



あの日だまりのような
楽しかった日々を
取り戻したい





蕾は力を抜いたように微笑み
首を横に振った




「それは、出来ないよ」