一つ、一つの座卓が
壁に仕切られ個室になってる
居酒屋で蕾と向き合う
とりあえず頼んだ
ビールの中ジョッキに
口をつけながら
「蕾、いいのか?」
「いいって何が?」
「いや、だって
こんな風に……ぼくと会って
叔母さん方に何か……」
ぼくは明日の葬儀には出ずに
帰るつもりだった
蕾は叔父と叔母に
育てられたようなモノだ
後々 何か言われないか……
心配するぼくに
蕾は首を横に振り
「大丈夫よ
私、あれから1人だったから
今は正直、疎遠になってる」
あれから1人だったから
………ってことは?
「蕾………」
蕾は ぼくを見つめた
「あれから
蕾はどこにいたの?」
ぼくは蕾に
あれから探してたけど
見つけることが
出来なかったことを告げた
蕾は2、3度 うなずいて
「それは……そうよ
私、東京に1人でいたんだもの」
蕾はまた少し微笑み
ジョッキに口をつけた



