靴が雑然と並んで
シルバーの細い傘立てにはビニール傘2本と黒いコウモリ傘がささってる
広いとは言えない玄関で靴を脱ぐ
背後に続く女の子の気配に とても違和感を覚えて
気持ちがソワソワしたのは
どうしてだろう
彼女は 紛れもなく
ぼくの妹の 蕾なのに
リビング…なんて
おしゃれな言い方は似合わない
10畳ほどの居間を挟むように
右と左に1つずつ和室がある
左は ぼくの部屋なので
右の和室へ蕾を案内した
「今日からは、ここが蕾の部屋だよ」
木の引き戸を開けると
届いたばかりの蕾の机とベッドが置いてあり
部屋の真ん中に段ボール箱が積んである
入り口に立つ ぼくの横を通りすぎ
蕾は キョロキョロ首を動かし部屋を見渡してから
窓の前に立ち
外を眺めた
陽の光を受けて より一層 髪が赤く茶色く見えた
その後ろ姿から6歳の頃の蕾の面影を探し出すことが出来なくて
知らない女の子に見えた



