ぼくの 妹 姫





「……どうして?
どうしてだよ……蕾
ずっと一緒にいようよ」



ぼくの涙で濡れる
蕾の頬を撫でて



「ぼくと一緒にいてよ、蕾
ふたりで何もかもやり直したい

やり直したいんだ………蕾

あの苦しかった日を
やり直したい

やり直そう……
ふたりで
ぼくと蕾で…………」



止めどなく流れる涙で
目の前は何も見えない



だけど、はっきりと
ぼくの目の前で
小さな蕾が笑ってた



『お兄ちゃん』



小さな蕾が
ぼくを呼んで笑ってる




嫌だった



ぼくの目の前で
蕾が傷つけられるのは



そして
同じだけ ぼくも傷ついた




「蕾がいなきゃ………
また、ぼくは…………
暗闇に怯えてひとりきり…

ひとりきり……
過ごさなきゃならない

頼むよ、蕾………
ぼくを助けてくれ」



やむを得ない事だった


火を放った事
両親を死に追いやった事


だけど罪は罪だ


蕾はぼくの免罪符


ぼくのそばで
蕾が笑ってくれれば
全てが許された




蕾を守ることで
ぼくは生きていけるのに




「………ごめんね、お兄ちゃん
だけど、これは『愛』じゃない
ずっとは一緒にいられない」





蕾の方が ずっと強かった



ぼくよりも ずっと




頼っていたのは誰だろう
甘えていたのは誰だろう





頼ったのも
甘えたのも



そして



守られていたのも




全部ぼくだった