ぼくの 妹 姫






真夜中



リビングで一人
ソファーに座り
ビールを飲んでいると



蕾が静かに部屋から出て来て
ぼくの隣に座った



リビングの電気は消えていて
奥にある
キッチンの白い光だけが
差し込んでた





「蕾。
どこか遠くに行こうか

誰もぼくたちを知らないところ

そこで、ずっと二人で暮らそう」



蕾は そっと
ぼくのひざの上に
手を置き




「蕾は行かないよ
お兄ちゃんとは行かない」



「……どうして?
だって、ここにいたら
美紗んところの伯父さんとか
うるさいし邪魔だよ……」




蕾は じっと
ぼくの瞳を見つめてから
首を横に振った




「お遊びはもうお仕舞いよ
ちゃんとお家に帰らなきゃ」



「……なに言ってるの?
蕾がなにを言ってるのか
ぼく、分からないよ」



「蕾は伯父さんの
言う通りにする」



蕾の言葉が
聞いたことのない
外国語に聞こえた



さっぱり理解できない



呆然とするぼくに
蕾は微笑みを浮かべ



「さよなら、お兄ちゃん
すごく楽しかった
今までありがとう」