翌朝、起きると
美紗がいなくなってた
美紗の荷物が消えた
自分の部屋に立ち尽くし
……気まぐれで
いきなり出て行くってことは
ないよなぁ………
迂濶だったと
今さらながら思ったけど
それでも、まだ
責められるいわれはないと
思っていた
ぼくには蕾しかいないし
蕾にはぼくしかいないんだ
親もいないし
誰にも迷惑かけず
兄妹ふたりで静かに暮らして
何が悪い?
その中で
互いに愛し合って
何が悪い?
他人の物を盗んだわけじゃない
蕾はもともとぼくの物だ
「………お兄ちゃん」
その声で後ろを振り返ると
戸口に制服のブラウスとスカート姿の蕾が立っていて
「お兄ちゃん
蕾のネクタイやって」
ぼくに差し出された
水色のネクタイを受け取った
蕾の胸元を見てると
夜のことを思い出す
その薄い布に隠された
肌の白さと柔らかさ
「………美紗さん
帰っちゃったね」
蕾の言葉に黙ってうなずいた
美紗の父親から
連絡が入ったのは
その日の夜だった――――――



