二人じゃあ3段重ねのランチボックスを空にする事は出来ず


残りは明日の朝ごはんだねって言いながら片付けた



レジャーシートの上
あぐらをかいた ぼくのひざに
蕾が頭を乗せ横になる



波の音を聞きながら
蕾の髪を指先で すく



「……来年は受験だね
といっても、ここには
北高と南高しかないけど」



田舎なのだ
高校進学を機会に
市外へ出て行く生徒もいる



「………高校かぁ
学費とか
お兄ちゃんに
迷惑かけるね……」


「なに言ってんの
それくらい心配すんな」


「……蕾、別に
高校行きたくないな」


「んー?
高校行かないで何するのさ?」


蕾は少し間をおいて


「お兄ちゃんのそばに
ずっとずっといたい……」



蕾は ぼくの前では もう
小さな小さな子供で


きっと これが ぼく達の
望んでいた形なのだと思う



蕾は安心して甘えたいし
ぼくは安心して甘えられたい




辺りは真っ暗で
空には冷たく月が輝く


だけど


ぼくのひざに頭を乗せ
目を閉じる蕾を見つめると


ここは日だまりに包まれたような暖かさがある




辺りは真っ暗闇だけど