「はい」


1つ宙に差し出すと


憮然とした表情で


「なんで、あるの?」



私は構わずベッドに横になって



「初めてじゃなかったら
私を抱きたくない?」



「……そう…じゃないけど」




「初めてじゃなかったら
私を嫌いになるんだ?」



「そうじゃないよ!」



私を見つめた宙の表情は
とても切なそうにゆがみ



………ダメかな?


出来ないかな?



ぼんやり
そんなことを思ったけど



結局 宙は私を抱いた



宙の体温はとても高く



抱き合うと暖かい



腕の中の

この高い体温は

決して私の求めてる物じゃないことをわかってる


だけど


「私のこと好き?」って聞くと



「好きだ」って
夢中で答えてくれた


その言葉は


つかの間、うたかたの時


私の存在を許してくれる





疲れたみたいにベッドに眠る宙を残して


シャワーを浴びた



身体の隅から隅まで
スポンジで擦る



降り注ぐシャワーの音が
鼓膜に響き


ギュッと目を閉じる


私を好きだと純粋に言う男子と
寝ることを覚えたのは中学入ってからすぐ



快感なんて感じたことはない


だけど


抱き合うと相手の体温は暖かい


好きでもない人と寝たって
どうってことなかった



一瞬だけでも
ひとりぼっちの自分を
忘れたかった