「うん………」



蕾は小さな声でうなずいて



「だけどね、お兄ちゃん


蕾もお兄ちゃんのそばに行きたいんだよ」




「…………蕾」




そのまま ぼくらはお互いに黙りこんで





ケータイなのに黙りこむなんて




とても重たい沈黙だった





しばらくして




「あ」



蕾が小さく声を漏らす




「どうした?」




「朝日

お兄ちゃん、朝日が出たよ

川面に反射して金色にキラキラしてる」



川面




蕾は川のそばにいるのか





ふと窓をみると




カーテンが
だんだん明るくなって行く




「蕾、こっちに来るか?」




朝の光を見たら




頭で考えるより先に



言葉が出てた




「え?」って言う蕾の声に
ハッとして



ぼくは何を言ったんだ




そう思ったけど




「学校、転校してもいいなら
おいでよ蕾」




「………お兄ちゃん」




「今度こそ、お兄ちゃんが蕾を守るから」



ぼくはもう一度
力を込めて言った




「ぼくが蕾を守るから」