右どなりの家、は。表札がない? なぜだか異常にどきどきしながら、呼び鈴を鳴らした。 ……出てこない。 表札がなかったから、やっぱりここには誰も住んでいないのかな。 それとも今日たまたま誰もいなかっただけ? そうだったら、また後日。 と、思ったところで、寝起きみたいなくぐもった声が「はい」と、気だるそうな感じで。 ドアが開けられて、出てきたのは男の人だ。 すらりと細長い身長。似合いすぎの黒ぶちめがね。茶色みがかった黒髪、短髪。 あぁこの人、世間で言うかっこいい、なんだろうな、きっと。