小雪が帰って来た

シャワーを浴びる音でわかった

ルイはベッドで寝返りを打つ

午前4時。きょうも一睡もしていない

不眠はいつものことだ。

小雪はシャワーを浴びるとバスタオル一枚で

ベッドに入ってきた。

「しよ?」

ん?ルイは目を開いて小雪を見た。

小雪は営業用の化粧を落として

すっぴんになっていた。

小雪は知的な顔立ちをしているのに

化粧をすると頭が悪そうな顔になる。

「化粧しないほうが美人なのになんで化粧するの?」

「仕事だからよ。し・ご・と」

小雪はキャバクラのナンバーワンキャバ嬢だ。

そのくせ部屋にはIT関連の難しい本がたくさん並んでいる。

「前にね「せ」をやってたの」

「せ?」

「SE。システムエンジニア。かなりハードな仕事だったわ」

「ふうん」

「頭を使うのが嫌になって馬鹿になりたくなった」

「それでキャバ嬢になったの?」

「そう。それだけじゃなかったけどね。お金もほしかったし」

「そんなにたくさんのお金どうするの?」

「教えない。一応理由はあるけどね今は教えない。それより、しようよ」

「ごめんね、僕できないんだ。女の人とそういうこと」

「あ、実はおかまだったりして」

「そうじゃないけど、ごめんね」

「わかった。じゃあいいよ。寝よう」

「うん・・・」

小雪はルイに背中を向けてすやすやと寝息を立て始めた。

ルイは小雪が寝たのを確認するとそっとケータイを取り出した。

きょうも来ていない・・・これで三日目だ。いつもは一日に5回以上は

メールを寄越すリナからのメールがここ三日ばかり途絶えている。

「どうしたのかな?」

ルイはベッドを抜け出して窓を開けた。都心近くにあるマンションからは

高層ビルの灯りが煌々と照らし出されていた。