「弥生、弥生起きて!女の名前を早く言うのよ!」



弥生の体を揺り動かしながら恵子が叫んだ。



「え・・・?・・・な、名前・・・?」



まだ意識がはっきりとしない弥生は、今の自分がおかれている状況を把握できずにいた。



「弥生、しっかりして!早く女の名前を言って!早く!」



裕子の声で、弥生はようやく我に返った。



自分の後ろにいる女に目をふさがれ何も見えず、今にもその女が自分の目を奪おうとしている。



弥生は徐々にはっきりとしてきた意識と共に、恐怖と不安も蘇ってきた。






「弥生ちゃん、起きちゃったんだ・・・」



女の声が弥生の耳元で大きく反響して頭の中で響きわたる。



「そのまま、眠っていればよかったのに・・・」



「起きたところで、弥生ちゃんにはどうすることもできないよ・・・?」




「どうするの、弥生ちゃん・・・?」



「早く私の名前を言わないと、大変だよ・・・?」



「私の名前を呼ばないと・・・」



「私は、だぁ~れだ・・・?」



「だぁ~れだ?」



「だぁ~れだ?」



「だぁ~れだ?」



「だぁ~れだ?」




自分の耳元で、執拗にささやき続ける女の声により、弥生の心は恐怖で満たされていき、いまにも壊れそうになっていった。