そこでおれは運命の、恋をする。

ありていに言えば一目ぼれ、だったのだけれど、本当に、夏帆はきれいだった。


旧校舎も、桜さえも、夏帆のために、夏帆のためだけに咲いているんじゃないかと思うぐらい、夏帆はその場に溶け込んでいて、そこにある何者よりも、夏帆は美しかった。

おれの視線に気がついた夏帆が、こっちを見て、にっこりと笑った。
それはひどく無邪気な笑みで、近寄りがたいまでのきれいさが緩和されて、愛らしい雰囲気が彼女を包み込んで。


間違いなく、おれはこのとき、恋をしていた。