風にのせて君へ



さっき私の前でめちゃくちゃ“上手い”曲を弾いてくれた


あのセンパイじゃないですか!



「雪先輩、この人ピアノめちゃめちゃ上手いですよ!」



私は雪先輩に抗議するように言う。


続いてセンパイは呆れて言った。



「雪、何してんだよ」


「ん? 可愛い後輩を助けてあげてんの。誰かさんと違って優しいから」


「自分で言うな」



ちょっと待って。

私の抗議は無視っすか。



「あの……雪先輩……」


「あ、そうだった。コイツが上手いはず無いじゃない。私この間聴いたんだもん」


「堂々と俺を侮辱するな」



本当のことを言っているだけじゃない、と雪先輩は言い返す。



「でもでもっ、私聴きましたよ。さっき、音楽室で。

めちゃくちゃ上手かったですよ?」


「そうなの?」



雪先輩は半信半疑で答える。


それから雪先輩はじーっとセンパイを見つめて言う。



「それなら、今度聴かせてよ?」



センパイは一瞬ぎょっとした顔をした。