その昔、私はピアノを習っていた。
だけど、どうしても曲のいいところで
・間違える
・つまづく
・それを引きずって続きもぐだぐだ
という、絶対にやってはいけないことを繰り返しピアノを断念した。
だから、
その下手な人の気持ちはわかるよー!
大丈夫、私もいるよー!
と、心の中で励ましてみる。
「あ、噂をすればだ」
雪先輩がピタリと止まって、
向こう側から歩いてきた人を指差す。
私はその指の先をたどる。
「アイツだよ、下手なヤツ」
「あ」
最後の「あ」は、私ともう一人の声が重なった。
だって、その人。

