放課後、
私は音楽室からピアノが聞こえてこないのをいいことに
こっそに音楽室に忍び込んだ。
いいよいいよ。
どうせ私はピアノが下手で、
奏先輩には気持ちが伝わらないままで。
……そう思うと余計に悔しくなってきた。
私はピアノの椅子に座って蓋を開ける。
どうせ、
下手だけどさ。
伝えてみたいんだよ。
届けてみたいんだよ。
『“誰かに届けたい”と思って弾くんだ』
奏先輩に、
届けたいんだよ。
自分の右手人差し指を鍵盤にのせる。
ポーンと、
高いソの音が音楽室に響く。
奏先輩があのとき弾いていた曲。
始めて、会った……
『……1年?
なんで1年が居るんだよ?』

