私は顔を上げて雪先輩に意地を張って言う。
「でも、奏先輩は私と会ったときもピアノ上手かったですよ!」
「……それは、本当に?」
「え?」
私は始めて奏先輩に会ったときのことを思い出す。
音は淡々としていたけど、
間違ってるところなんて一つも無くて……
「あのときの奏は“間違えない”ようにしか弾いてなかった」
あ……
『ピアノは間違えないように弾くもんじゃない』
「奏はそれに気がついたみたいで、すごくピアノが上手くなった。
あのときみたいな、
機械みたいな音色じゃない。
心の中にすっと入り込んで、その人の感情を揺さ振る……」
奏先輩、
「それは、誰のおかげかな?」
やっぱり答えが欲しいよ。

