雪先輩は軽くため息をつくと、私の頭の上に手のひらを乗せた。
「ずっと、私と奏のことで悩んでたんでしょ?」
図星で何も言えない私を
雪先輩はあははっと笑って言う。
「可愛いなー、乙冬ちゃんは」
そう言って一通り笑ったあと、
雪先輩は少し後ろめたそうに話す。
「確かに奏から2年のときに、告られたことはある」
その雪先輩の言葉に
私は目を見開いて地面を見つめる。
……ほら、やっぱり。
やっぱり
私に勝ち目なんか……
「そのとき、奏は『雪がピアノを教えてくれたから』って言った。
……でも、そんなのただ“キッカケを与えた人”で好きになる理由じゃない。
もし、そんな理由でそう思ったんなら
それは“好き”じゃなくて“感謝”よ」
それに、とちらりと私を見て
雪先輩は微笑んで言った。
「奏、乙冬ちゃんに会ってから、急にピアノが上手くなった」

