奥まで、入ると… ―時が止まった気がした。 いつも電車の中しか見たことがない彼。 彼がそこに座っていた。 彼は私たちの存在など無視して、キャンパスをみていた。 …F12ぐらいだろうか。 リーゼルを立て、必死に描いているようだった。 みんな私たちの方に近づいて、楽しく話しをしているのに、明らかに浮いていた。 「凪!」 親しそうに青木先輩が呼ぶ。 その彼がゆっくりと振り向いた。 ―息が止まるかと思った。