そんな折──依頼でユタ州に向かったセシエルとライカは、対象者を捕らえて依頼主に引き渡すため、アリゾナ州へと南に車を走らせていた。

 途中、ガソリンスタンドで給油し、隣のレストランでテイクアウトを頼むようにライカに言いつけ、後部席に座らせている男と共に車中で待つ。

「おい、おまえ。流浪の天使だよな?」

 声をかけられたが答えない。

「まだ現役だとはなあ。驚いたぜ」

 男の言葉からは呆れを感じる。俺の正確な年齢は解らずとも、年季の入った顔を見れば、未だ現役でいることに鼻で笑われても仕方がない。

 ハンターの報酬は高額であるぶん、ハードな仕事だ。そのため引退も早く、大体は現役中に得た報酬で老後をのんびり過ごす。

「ああ、もしかして。あの間抜けなやつが、おまえの弟子なのか?」

 へらへらと笑う男に腹が立つ。しかし、間抜けと言われても反論が出来ない。何せ、こいつを追いかけるときにライカは盛大にすっころんで擦り傷だらけになった。

 そのせいで俺は、体力の限界まで走り続けることになった。どうにか捕まえたものの、しばらくまともに動けなかったくらいだ。

 俺のように名の知れたハンターなら、弟子の一人や二人、いてもおかしくはない。しかし、俺は自分の教えベタを理解しているため、ライカに出会わなければ弟子をとるつもりなんてなかったんだ。