天使の拾いもの

「止めないでよ。クリア」

 未だ制止を続けるセシエルに震える銃口を向けるが、それでも揺るがない鋭い視線にライカは顔をしかめた。

 引鉄を絞る仕草を見せても、セシエルは少しも動こうとはしない。

 負けてなるものかと睨み返すが、幾度も死地を経験してきた重みに勝てるはずもなく気圧(けお)されたことで、ようやく落ち着きを取り戻す。

「オレ……。オレは──っ」

 両親から受けた暴力が脳裏によみがえり、ゆるゆるとハンドガンを下ろした。

 捨てられたこと、殴られたこと、誕生日を祝ってもらえず、一度もプレゼントをもらえなかったこと、それら全てがライカの目から涙を落とした。

「うう。なんで」

 父さんも、母さんも、他人(ひと)を殺すほどの価値なんか、なかったじゃないか。

 これが現実なんだと、絶望にうちひしがれる。自分は両親にとって、取るに足りない存在なんだと、認めたくなかった。

 まるで、犬を捨てるときのように「ここで待っていろ」と言われたのは、紛れもなく現実だったじゃないか。

「ライカ……」

 大きな体を折り曲げてしゃがみ込み震える体を、セシエルは言葉もなく見下ろしていた。