──殺してやる! 怒りが収まりきらないまま男を警察につきだしたことで、さらなる怒りが上乗せされ女を追いかけるライカの足はいつも以上の速さだった。
ここで逃がしてたまるものか。絶対に報いを受けさせてやるんだ。
「ちくしょう! 来んな!」
女は震える足で必死に逃げるが、投げつけるゴミに一切、怯むことなくその背中を見据えて迫る。
そして、転がっていた空き缶を素早く掴んで女の足下に投げつけた。
「きゃあ!?」
見事に当たって女は転ぶ。
「よくも、よくも」
声を震わせながら女を見下ろし銃口を向けると、女はその形相と向けられたハンドガンを前に引き気味に小さく叫んだ。
「死んで、償え」
「ライカ!」
ようやく追いついたセシエルは、二人の間に入って引鉄を絞るライカを制止した。
「どけよ!」
「だめだ! 落ち着け」
ハンターになれば、いつかは人を殺めるときが来るだろう。しかし、今じゃない。それは今じゃない。