「お前は、ハンターになるんだろう。だったら、やることが違うだろ」

 それはハンターの仕事じゃない。そう言って結束バンドを差し出した。それをライカは無言で見下ろし、乱暴に掴み取ってへたり込んだままのアントンに近づく。

 こうなっては残りの女も捕まえさせた方がいいだろう。男を速やかにここから移動させ、警察署に向かう。

 なるべく早く男を受け渡す手続きを済ませて、残る女がいるアパートに(きびす)を返した。

 今回は女一人だ。部屋に乗り込んでも逃げられることはないだろう。夜中だからエントランスに管理人はいない。もし昼間でも、何枚か紙幣を握らせれば問題はない。

 確認していた部屋のドアに耳を近づける。微かにテレビの音が聞こえて、セシエルは固唾を呑んで見ていたライカにゆっくり頷いた。

 二人はハンドガンを手にして、セシエルがベルを押す。少しして足音が近づいてくる。しかし、警戒しているのか、鍵を開ける気配がない。

「すいません。隣の者ですが」

 出来るだけ印象の良い声色で発する。それでも鍵が開くのに数秒を要し、隙間から女の目が見えた瞬間、セシエルは勢いよく扉を開いた。

「!? ちょっ──なにっ?」

 飛び込んできた男二人に驚きつつも、場慣れしているのだろう、素早く奥に駆け込んで窓から逃げ出す。

「待ちやがれ!」

 急いで追いかけるも、女はあっという間に外階段を駆け下りてアパートから離れていく。この速さは予想外だった。

 セシエルはハンドガンを仕舞い、足早に女のあとを追いかける。

「待て!」

「ライカ!?」

 こいつ、こんなに速かったか?

 ドカドカと、でかい図体で女を追いかけるライカの背中に目を丸くする。

 いや、感心している場合じゃない。あいつが女を捕まえたとして、二人きりにするのは危険だ。


†††