天使の拾いもの

 
 ドアが閉じてすぐ近づいて、階段を上る音が遠ざかる所でゆっくりとノブを回す。足音を立てずに階段を上がり、聞こえる足音を追う。

 三階で足音が一旦、止まりドアが開く音が聞こえ、入っていく影を確認して駆け上がる。静かに隙間を空けて、男が右にある部屋に滑り込むのを見てから大きくドアを開いた。

 男が入った部屋の扉を見つめて、耳を近づける。微かにテレビの音が聞こえたが、さすがに話し声までは聞こえなかった。

 とりあえず潜伏場所は確認出来た。あとは、様子を見て捕まえるだけだとロビーに向かう。一階のエントランスには小さなガラスの窓口があり、一応は管理人がいるのかと、そこにいる若い男に話しかける。

 セシエルはハンターだと名乗り、目当ての名前を述べる。二十代ほどの青年は、いかにも面倒そうな目を向けて引き出しにあるノートを取り出して確認したのち「ああ、いるね」とぶっきらぼうに答えた。

 それだけ解れば用はない。自分が来たことは誰にも言わないようにと念押しし、迷惑はかけないと言い置いて外に出た。

 スマートフォンを手に取り、ライカに連絡をする。言いつけ通りに車にいるようだ。すぐに戻ると言って通話を切り歩き出す。

 さて、このことをライカに話していいものか思案しつつ、途中のカフェでハンバーガーをテイクアウトし車に戻った。