──それから一年後、セシエルは眼前のライカに小さく溜息を漏らした。

 歳が歳だけに、セシエルは選んで依頼を受けていた。仕事を一つ終えると、しばらく休養をして、その間にライカにハンターとしてのノウハウを叩き込む。

 しかし、ライカは指名手配犯の顔を覚える以外は、からっきしだった。

 ハンドガンに関しては、基本的な手入れや撃ち方などはどうにか覚えたが時間がかかる。ライフルは構えている間に撃ち殺されるほど遅い。

 体術はまあ体格もあってか、少しは出来る。それだって、でかい図体(ずうたい)のおかげでしかない。

 武器を持った相手の対処法は教えているものの、そのときになって対処出来るとは思えない。何もかもが不安だ。

 それでも稼がなければ生活もままならない。かといって老後のための貯金を崩す訳にはいかない。一応は保険に入っているが、先の不安は拭えない。

 レストランでスパゲティを頬ばるライカを、溜息と共に眺める。そんなセシエルにライカは小首を傾げた。

 生ハムをいじりながらウイスキーを傾けていると、ガラス張りの店内から道路に向けた視線がその衝撃に揺れる。

「あいつ──!」

「お? クリア?」

 突然、外に駆け出したセシエルにライカは驚いて食べる手を止める。何かを追いかけるセシエルの顔が、怒りに満ちていたことに呆然とした。