「聞いてなかったのか? 胃けいれんを起こしたくなかったら、言うことを聞くんだ。折角、食べた物をすぐに吐き出すことになるぞ」

 お預けを食らった少年は目を潤ませつつ頷き、差し出されたスープにゆっくりとスプーンを沈ませた。

 また取り上げられてはかなわないと、がっつくのを必死に抑えて手を震わせる。言われた通りにひと口目はしっかりと噛みしめた。

「次は、ゆっくりとすすって飲むんだ。あと三回、それを繰り返せ。そしたら普通に食べていい」

 何日も何も入れてない胃に、突然食べ物を放り込むと胃は驚いて入ったものを受け付けない。

 子供にそれを言ったところで理解することは難しい。言うことをきかせるには、目の前で奪ってやるのが一番、効果的だ。

 何日くらい食べていないかは解らないがその可能性が高い以上、慎重に食べさせなくてはならない。