天使の拾いもの

「なんで襲撃されたんだ?」

「ベリルを奪うため」

 危険因子と見なされた男を毒殺し損ねた結果、施設は襲撃されベリルに教育を施していた専門家やスタッフなどが全て殺害された。

「危険因子?」

「リーダーのベルハース教授の友人だった言語学者の思想が、やばかったらしい」

 このままにしておく訳にはいかないが、施設から出す事も出来ない。政府は考えあぐねて、その男を殺害する事にした。

「ところがだ、毒の量があまかった。外に運ばれて仮死状態から目覚め、施設は襲撃された」

 とても信じられない話が語られていく。思考が追いつかない。

「あいつを逃がしたのは、ブルーという奴だそうだ。優秀な軍人だったと言っていた」

 今にして思えば、という話で当時はそこまで解ってはいなかっただろう。ベリルは逃げ切れたのだ、確かに優秀だったかもしれない。

「へええ……」

 セシエルは、矢庭(やにわ)に綴られる物語に、聞かされた事を必死に反芻(はんすう)する。

 ──十五年を過ごした場所で、共に暮らした人たちがみんな殺された。誰も救えず、逃げなければならなかった事が、どれだけ悔しかっただろうか。

 ……カイルの話が本当ならだが。

 危ない危ない。つい、信じるところだった。いやまて、その前に──