天使の拾いもの

「初めからって。人間から産まれてないみたいな言い方じゃないか」

「そうだ」

「──は?」

「人間の血縁はいない」

「は?」

 真面目な顔を向けられてセシエルは戸惑う。

「これから話すことを信じるかどうかは、お前が決めればいい」

「言い逃げする気かよ。待てよ、俺は聞く気はないんだぞ」

 そんなセシエルの抗議にも意に介さず、カイルは口を開く。

「あいつと出会ったのは、アルカヴァリュシア・ルセタの森だった」

 ヨーロッパの中ほどにある小国だ。過去には世界最高の科学力を誇り、その技術を輸出していた。

 しかし現在は突出した技術もなく、国土も狭く、海にも面していない。経済破綻するのは時間の問題だと言われている。

「その森には遺伝子研究所があってな。集めた遺伝子から、人工生命体を造る研究をしていた」

 そこで、あいつは生まれた。成功したのは、あいつだけだったらしい。

 その研究所は、あいつが十五歳のときに襲撃を受けて、そこにいた人間は全員、殺されたそうだ。

「全員? 何人いたんだ」

「三百人」

 その数にセシエルは息を呑む。

「あいつが生き残ったのは、生来の強運と抜群の戦闘センスのおかげだろう。施設にいた頃に戦闘技術をある程度、教わっていたらしい」

 俺は二人目の師匠って訳だ。