天使の拾いもの

 
 一方、カイルの反応を待っているセシエルは、空になったコーヒーカップに視線を落として、組んだ手の指を心許なく動かしている。

 いつまでこうしていればいいんだ。全然、喋らねえ。こっちから話しかけるのも変な気がするし。

 カイルの視線はもう鋭くはないが、やはり居心地が悪くて尻がむずむずする。

「あいつと会ったのは何度くらいだ」

「二回、かな」

 深く考えなくても即答出来る。それくらい、強烈な出会いだった。

「二度?」

 たったの? それだけであいつは、知られてもいいと思ったのか。あいつは誰かに話したいと考えるような、(やわ)(たち)じゃない。

 カイルはベリルの思考に疑問を抱きながらも、斜め左に腰掛けているセシエルをひと睨みして小さく溜息を吐く。

「ミッシング・ジェムって知ってるか」

「? なんだそれ」

「人類にとって、存在してはいけない存在──だそうだ」

「……。例えば?」

「ベリル」

「はい?」

 唐突に自分の弟子に対して何を言っているんだ。

「あいつ、親がいないんだ」

「孤児なのか?」

「いや。初めからいない」

 これまたおかしな事を言いやがる。セシエルは思わず口角を吊り上げた。