玄関を入ると右に二階へと続く階段が見え、そのまま廊下を進む。左にある木製の扉が開かれ、カイルの背中を追うようにリビングに入る。
ブラウンの革製ソファの奥には、ダイニングキッチンがある。どこも掃除が行き届いているらしく、清潔感に溢れていた。
「まあ、歓迎するぜ」
そう言ってカイルはセシエルをソファへ促しながら、キッチンに向かう。セシエルはコーヒーを入れる準備をしているカイルを一瞥し、ソファに腰を落とした。
前に向き直り、付いていない液晶テレビに映る自分の姿を視界全体で捉え、手持ち無沙汰に膝の上の手を組む。
どうしてこうなった。どうしてこの男は、俺を親の敵みたいに戻ってこいなんて脅したんだ。
しばらくして良い香りが鼻腔をくすぐり、戸惑っているセシエルの前にコーヒーカップが置かれ、カイルは斜め右にあるソファに腰掛けた。
「どうも」
生返事をするセシエルを見つつ、カイルはコーヒーをひと口すする。
「で、あいつとどんな関係?」
きた、いきなり本題に入るタイプか。いやまあ、俺と世間話をするのも変か。
ここまで来たらもう逃げられないとセシエルは溜息を吐いて、ベリルとの出会いから語り始めた。
カイルは神妙な面持ちで、それらを聞いていた。嘘がないかを見定めているのだろうか、視線が鋭い。