天使の拾いもの

 
 対象は知り合いの家に隠れているらしい。

 今はまだ太陽が高く、行動するのは深夜だろうと家の場所を確認して、ひとまずそこから距離を置いて車を駐める。

 捕まえる男は恋人への暴行から始まり、エスカレートして殺しかけた。他に恐喝、窃盗、薬物依存──それだけじゃない。

 飲酒運転を繰り返し免許停止、そのあいだに無免許運転で事故を起こし、ひき逃げをしたあげくに捕まって保釈金を借りたはいいが、刑に服す気がないのでそのまま逃走中だ。

 ここまで見事なクズもなかなか珍しい。

 いつかは出てくるはずだと、セシエルは車の運転席でずっと見張っていた。

 ライカは辛抱が出来ない性質(たち)なのか、車を駐めてまだ三十分ほどしか経っていないのに、すでにそわそわしている。

 もう成人なのだから、暇ならどこかで時間を潰して来いと言いたいが、こいつを一人にするのはどうにも不安だ。

 そこでセシエルは、はたとして親馬鹿か俺は、と頭を抱えた。

 いい大人に何を心配してるんだ。見た目が熊な奴に気を揉み過ぎだと溜息を連発するセシエルに、助手席にいたライカは首を傾げた。