天使の拾いもの

「──ノースカロライナ?」

 追跡を依頼してから三日後、報告された場所にセシエルは眉を寄せた。

「よりによって、なんだってこんな所に逃げるかね」

 フェイエットビルって、おいおい……。頭を抱えて深い溜め息を吐く。

 あえて避けていた訳でもないが、いや、無意識には避けていたかもしれない。ここにはあいつ(ベリル)の師匠がいる。

 あいつの全てを知る人物──名前は確か、カイルと言ったか。とりあえず調べられる範囲で調べてはいたが、それは会うためとかじゃない。

 会わないため(・・・・・・)に調べていたのだ。

 話してくれるかどうかは解らないが、知りたいという気持ちはあった。しかし、あえて訪ねるほど知りたい訳でもなかった。

 隠してきた事なら、知れば俺もその重荷を背負うことになる。それを考慮したうえで、あいつは俺に判断させたんだろう。

 こんなことなら、むしろ調べない方が良かったとさえ思える。知らなければ、出会ったとしても解らずにすれ違う程度で済んだだろう。

 とはいえ、依頼をキャンセルするつもりはない。だったら、行くしかない。

 そうそう会うこともないだろう。セシエルは考えてノースカロライナ州、フェイエットビルに車を走らせた。

 向かっている間にも、助手席のライカには課題を与えている。

 よく使用される、幾つかの銃器についてのテストをさせているのだ。なんだって俺が、こんなテストを作らなきゃならないんだと思いつつ、これもライカのためだと考えれば苦ではなかった。

 自分への復習だとも思えばいい。

 三択形式の問題を、ライカは唸りながらもタブレットを睨みつけ、時間を掛けて回答している。

 こいつのために、何かしたいと思える。俺も少しは、親らしく出来ているのだろうか。